【『大人の武者修行』体験談】「マンツーマンで経営者の考えを濃密に学べたのが、私の財産です」~(株)TTC・田村さん~

 
大人の武者修行に参加した(株)TTC・経営企画室経営企画部課長の田村典靖さん

 

会社をやめずに、異業種の企業で3日~数カ月間にわたって働くことができる「大人の武者修行」。具体的なメリットを知るには、実際に体験した人に聞くのが一番です。そこでご登場いただいたのが、三重県のかきうち農園で約2週間の武者修行をした、(株)TTC・経営企画室経営企画部課長の田村典靖さん。2017年11月6日に名古屋で催された事業説明会に登壇した時のコメントをまとめました。ぜひご参考ください。


▼田村さんの経歴と、(株)TTCの概要について

私は現在34歳。少し、経歴が変わっていまして、トマト農家で長期研修を受けておりました。そのなかで本格的に就農を考え始めたころ、「今後の日本の農業を変えたい」と考え、27歳の時に、東京農業大学に社会人入学。そこで学び直した後に、今の会社に就職しました。

(株)TTCは、1977年に創業された会社で、当初は熱海の土産物店におかきを卸していました。そこから、食品やコスメなどの観光土産品を企画開発したり、農産物直売所や飲食店などが揃った「伊豆・村の駅」に始まる直営店を設立・運営したり、と事業を拡大していきました。どの事業も、根幹には「地域活性化」「地域のものを全国に広めていく」という目的があります。

私は、(株)TTC経営企画室に所属しながら出向という形で子会社の(株)村の駅の運営する「伊豆・村の駅」で飲食部門と通販部門のマネージャーをしています。伊豆・村の駅では、伊豆名産品のブランド化を進めており、地元のしいたけを使ったハンバーガーや、地元の卵を使ったスイーツを作ったり、地元の塩を使った製品を開発したりしています。直近では、伊豆のはちみつのブランド開発をしていまして、地元の養蜂家さんに弟子入りをして、朝4時にみかん農園に行き、蜂蜜取りを学ぶ生活を送っています。また、今年からは地域創生に関するコンサルティング活動もしています。

(株)TTCのホームページはhttp://www.ttc-gr.co.jp/

▼2016年に「大人の武者修行」に参加したきっかけ

かきうち農園さんを志願した理由の一つは、今のマネジメント業務に加えて、将来、経営者になったときの考え方を学びたいと考えたからです。

弊社は、代表の河越が「100人の経営者を育てる」ことを掲げていて、10社以上のグループ企業があります。私が入社したのも、その思いに共感したからです。

では、経営者となる上で、何を学んでおくべきか。そう考えていた時に、社長の河越から勧められたのが、「大人の武者修行」でした。

なかでも気になったのが、かきうち農園さんです。「伊豆・村の駅」でみかんを扱っていますし、業界でかきうちさんは有名なので、私も以前から存じ上げていました。そんな農園で学べるのならば、ぜひ参加したいと考えたのです。
仕事のノウハウも知りたかったのですが、それ以上に、垣内社長がお母さんと二人で始めたところからどのような思いを持って、どんな経緯をたどって今に至るのかを、現場で同行させていただきながらお聞きしたいと考えていました。

 

▼かきうち農園では、2週間でどのようなことを体験したのか

農業生産法人に行くと、一見、収穫などの作業ばかりするのではないか、というイメージがあるかもしれませんが、実際には、垣内社長と共に、さまざまなところに同行させていただきました。

たとえば、三重大学の商品開発会議や、農林水産省やジェトロが主催した意見交換会などです。みえのこだわり食品マッチング交流会では、私がかきうち農園さんの商品のプレゼンをしました。インターンシップで来たからというのは関係なく、あたかも社員の一人であるかのように同行させていただきました。

 

▼最も勉強になったことは?

会議などの行き帰りの車中で、垣内社長から「どんな考えにもとづいて、経営判断をしているのか」をじっくりお伺いできたことです。

垣内社長は、私だけでなく、若手社員も、このような会議に積極的に連れて行くそうです。また、販路開拓のための海外出張にも同行させているといいます。その時間は収穫などの作業ができませんから、目先のことを考えればマイナスかもしれません。しかし、それよりも、次の世代が魅力的だと感じること、今の若い人が「この会社で働きたい。この社長に付いていきたい」と思えることをする、というのが、垣内社長の考え方なんです。

だからこそ、名古屋に行くのも何時間もかかるような場所にもかかわらず、地元外からわざわざ就職しようとする若者が集まるんだな、と納得できました。

垣内社長の話を何時間もお聞きできたことで、自分が会社に戻ってマネジメントをする時や、将来、経営者になった時に、何を心がけるべきかを、数多く学ぶことができました。具体的には、「経営者は、いかに先を見て動かなければならないか」「部下を成長させるためには、チャンスを与えるだけでなく、その意味を伝えることや、事後のフォローが重要」……。挙げればキリがありません。

別に、今日は、垣内社長を褒めるために来たわけでは無いんですが(笑)。プライベートに至るまで、自分の上司ともここまで話したことがないほど、ざっくばらんに話すことができ、多くのことが得られました。

 

▼大人の武者修行で学んだことは、仕事にどう生かされているのか?

「お客様の手に商品が渡った時に、最高に満足していただくためには、どうすれば良いか?」という考え方で、自社商品やサービスを見直すようになりました。

たとえば、みかん箱には普通、取っ手の穴が開いていると思うのですが、かきうち農園さんの箱には穴が開いていないんです。その理由は、穴を開けることで箱の強度が下がり、みかんがつぶれる可能性が高まるから。みかんは贈答用に使われることが多く、もらった時につぶれたみかんが一つでもあれば、先方に「ちょっと残念だな」と思われてしまいます。それを見越して、細かい工夫をしているんです。

ただ、会社によって事情がありますから、やり方をそのまま真似しても、うまく行くとは限りません。そこで、「最高に満足してもらうには」という観点で、自社商品を改めて見直すようにしました。すると、いろいろな不備に気づきます。たとえば、はちみつの瓶のラベルを作る時、デザインが良くても、お客様にとって本当にベストなラベルとは限らない、というようなことに気づくわけです。

また、これまでは部下やパートの皆さんに単純な指示しかしていなかったのを、「なぜそうしなければならないのか」「その背景にはどんな思いがあるのか」という作業の意味まで説明するようになりました。そうすることで、作業の指示は命令ではなくなり、やらされ感がなくなったと思います。細かく説明するのは面倒なこともありますが、その手間を惜しまないことが重要だというのも、垣内社長から学んだことです。

 

▼受け入れ先に転職しようという気は起こらないのか

長く修行をすることで転職したくなるのでは、という話もありますが、私は、そう思いませんでしたし、他の修行者もそうだと思います。それは、武者修行を許してくれて費用まで出してくれた自社の社長や、修行期間の仕事を引き継いでくれた同僚への感謝があるからです。

そうした気持ちがあったので、修行期間中は、常に「かきうち農園さんで学んだことのなかで、自社に取り入れられることは何か?」という観点で物事を見ていました。

垣内さんとは、武者修行が縁で、連絡を取り合っており、仕事上でも連携しようと話をしております。こういう強いつながりができることも、大人の武者修行に参加するメリットだと思います。
(了)

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杉山 直隆「30歳からのインターンシップ」編集長

投稿者プロフィール

ライター/編集者。オフィス解体新書・代表。
1975年、東京都生まれ。専修大学法学部卒業後、経済系編集プロダクションで雑誌や書籍、Web、PR誌、社内報などの編集・ディレクション・執筆を、約20年ほど手がけた後、2016年5月に独立(屋号:オフィス解体新書)。http://officekaitai.xsrv.jp/ 2017年8月に本サイトを立ち上げる

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