【70歳以上も多数参加。初年度から73人が就職内定】3~5日間試しに働き、体力などの不安を解消した上で、再就職先を決められる。埼玉県の「シニアインターンシップ」

 
仕事体験の前には、面接などのノウハウがわかる1日講習が受けられる

こんにちは、「30歳からのインターンシップ」編集長の杉山です。

60、70歳代だけれども、体はまだまだ元気いっぱい。自分が役に立てる職場があれば喜んで働きたいというシニアの人は、たくさんいるのではないかと思います。
しかし、その一方で、「この年齢で受け入れてもらえるのか」「体力的に持つだろうか」といった不安から、求人を見つけても申し込んでいない人も多いのではないでしょうか。

そうした元気なシニアが安心して働ける場を見つけられるように、2017年度から埼玉県が始めた取り組みが、「シニアインターンシップ」です。

働きたいシニアと雇いたい企業、双方の不安を解消する

再就職したいと考えている人が、候補となる企業で数日間働き、自分に合っているかどうかを試すことができます。
「再就職にあたり、シニアの方が不安に思っているのは、『新しい職場でうまくやっていけるのだろうか』ということ。一方、企業側も、『新しい職場で順応できるのか』『判断力や体力は十分にあるか』という不安を持っています。その双方の不安を解消するためには、インターン期間を設けるのが良いと考えました」と話すのは、埼玉県産業労働部産業人材育成課の竹内正明さんです。

70歳以上も4割。初年度から124人が体験し、73人が就職内定

対象は、県内在住の60歳以上の人。早期退職をした55歳以上の人もOKです。現在までの参加者は60代後半が最多ですが、70代の参加者も4割いるそうです。最高年齢は79歳といいます。
「ここまで70代が多いとは予想外でした。もっとも、今の70代はお若いので、バリバリ働ける方ばかりですね。79歳の方も語学堪能で、即戦力でした」と話すのは、この事業を県から委託されているマンパワーグループの市川敏子さん。

これまでに約280人が申し込み、そのうち、インターンをしたのが、1月末の時点で124人。うち、73人が再就職を決めたそうです。
「就職に至らなかったケースも、企業が断ったのではなく、シニアの方が『体力的にキツい』などの理由で辞退されていることが多い。ミスマッチを防げています」(市川さん)

事前講習だけでも、意欲が高まる

具体的には、まず、希望者は、「事前講習」を1日だけ受けます。大宮、所沢、秩父、越谷、深谷、久喜など、県内6カ所で開催されているので、自宅から近い場所で気軽に学べます。「多いときで1回あたり10~15人ほどいらっしゃいます」(竹内さん)。

講習では以下のようなことを学びます。
・埼玉県の労働市場の解説(シニアを求める企業ニーズについて)
・これまでのキャリアの棚卸し(自分を客観的に見て、自分の強み・弱みを再認識する)
・応募書類の書き方、求人に関する電話問い合わせの仕方
・面接のロールプレイング
・新しい職場でのコミュニケーション方法

「自分の力を社会に役立てるためのノウハウを身につけられます。これで『自分もまだまだいけるとわかった』と、インターンを利用せずに、自力で求人のチラシなどを見て応募し、仕事を決めたという人もいましたね。また、事前講習には他の方も参加されるのですが、意欲の高い人が多いので、その姿を見て、意欲がさらに高まる効果もあるようです」(市川さん)

求人数は200件以上。大手企業が多い

講習を受けたら、コンサルタントとの面談の上、どの企業で試しに働くかを決めます。
求人をしている企業はいずれも埼玉県内の企業で、1月末の時点では146社・227件。大手企業が圧倒的に多いそうです。
「いずれもシニアを雇いたいという意思がある企業。その会社の仕事が未経験でもOKという企業が多いですね」(市川さん)

仕事内容は、マンションの管理人に代表されるビル管理、ATMなどの警備、介護施設や病院などの調理補助、福祉・介護、工場の軽作業などが多いそうです。

仕事体験はあくまでお試し。職場の雰囲気をつかむ

インターンシップ先の企業が決まったら、職場体験をします。日数や時間、仕事内容などのメニューは、参加者の要望を聞いた上で、企業側が決めます。
期間は3~5日間。短い時は1~2日ということもあります。時間も午前中だけ、4時間程度などまちまちです。

事業所の説明を聞いた後、現場を見学したり、実際に仕事を少し体験したりします。
「たとえば、製造組み立ての工場なら、部品のピッキングや目視確認などを少しだけ体験してもらいます。本格的に働くのではなく、あくまでお試しです」(市川さん)

これで、仕事内容や職場の雰囲気、一緒に働く従業員などを確かめ、気に入ったら、採用選考を希望できます。双方が合意すれば、晴れて採用となります。

このように、事前に数日間でも働くことで、再就職先に対する不安を拭うことができるわけです。
「『職場の方が親切に教えてくださる』という声が多いですね。基本的にシニアを雇う意思がある会社ばかりなので、ちゃんとフォローをしてくれます」(市川さん)

受け入れ企業も誤解が解ける

このプログラムは、受け入れ企業からも非常に好評だ、と市川さんはいいます。
「『資格を豊富に持っていて、即戦力だった』『予想以上に動きが良く、キビキビしている』など、想像よりもバリバリ働ける方が採用できたという声が多いですね。とくに70代の方が予想以上に若くてしっかりしている、と思われるようです。こうした誤解が解けることが、インターンシップのメリットだと改めて実感しました」

シニアを採用することで、育児中の女性社員の離職防止につながったという例もあるそうです。
「子育てをしていると、急な発熱などで帰らなくてはいけないことがある。それで気まずくなり、退職するケースは多くありますが、その職場では、シニアの方が急遽シフトを変わってくれることで、仕事の穴が埋まり、皆が助かっているそうです。60~70代の方が、さまざまなところで活躍されているのを聞くと、私たちももっと頑張らなくちゃ、と刺激を受けます」(市川さん)

応募締切日は、2017年度に関しては2018年の2月末日を予定しています。2018年度も実施に向けて準備中とのことなので、焦ることはありませんが、早く体験してみたいという人は、下記の電話かホームページに問い合わせてみてください。


【埼玉県シニアインターンシップ・DATA】
実施期間:ケースによって異なる(事前講習は、埼玉県内6カ所で随時開催中。大宮、所沢、秩父、越谷、深谷、久喜など)
実施場所:埼玉県内の企業
受講資格:埼玉県内在住の60歳以上の人(早期退職をした55歳以上の人も可能)
体験内容:企業によって異なる(業種・仕事は販売、警備、介護、製造、技術など)
受講料:無料
賃金:なし
交通費:とくに支給なし
体験後の就職:可能性あり

(応募締め切り)
2017年度は2月末日。2018年度も実施に向けて準備中

(問い合わせ・申込み先)
■埼玉県シニアインターンシップ事務局
TEL:0120-926-366 (月~金曜日9:00-18:00)
URL:https://www.pref.saitama.lg.jp/a0813/scc-internship.html

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杉山 直隆「30歳からのインターンシップ」編集長

投稿者プロフィール

ライター/編集者。オフィス解体新書・代表。
1975年、東京都生まれ。専修大学法学部卒業後、経済系編集プロダクションで雑誌や書籍、Web、PR誌、社内報などの編集・ディレクション・執筆を、約20年ほど手がけた後、2016年5月に独立(屋号:オフィス解体新書)。http://officekaitai.xsrv.jp/ 2017年8月に本サイトを立ち上げる

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