【あなたのOSは最新ですか?】「留職プログラム」を利用し、インドのNGOに3カ月間派遣されたIT企業のマネジャーに話を聞きました

 
一番右が、留職した真鍋さん

こんにちは、「30歳からのインターンシップ」編集長の杉山です。

昨日、新興国の社会課題の現場に飛びこみ、己を鍛えるという「留職プログラム」を取り上げましたが、


「実際どんな感じなのか?」「具体的に何がハードなの?」ということで、体験した方に話を伺いました。

電通国際情報サービスでシステム関係の仕事に携わっている真鍋元晴さん(冒頭の写真で、一番右の方です)。
38歳のときに、インドでマイクロファイナンスを手がける団体に3カ月間留職されたそうですが、どんな体験をされてきたのでしょうか?

――――――

「このままの自分で良いのか?」とチャレンジ!

――真鍋さんが「留職プログラム」にチャレンジした経緯を教えてください。
真鍋
一番の要因は、「このままの自分で良いのか?」という不安や焦りがあったことです。
30代も後半に差し掛かり、現業はちゃんとやっていましたが、会社に新しい価値を何も提供していないのでは? と。何かチャレンジしなければ、と考えていました。

そんなときに、「留職プログラム」の記事を見たのです。海外のクライアントと英語で仕事をした経験はありましたが、会社の名前が通用しない、日本人すらいない新興国にいったとき、自分はどれだけのバリューを出せるか――。直感的に「面白い!」と感じました。

「会社で留職ができる制度をつくろう」と人事に直談判し、その第1号として、私が挑戦したわけです。

クロスフィールズさんからいくつか提案された留職先のなかから、自分の専門スキルが活かせる金融業界を選び、マイクロファイナンスを手がける、インドのバンガロールの団体を選びました。

「全然違う」「お前にはそんなこと期待してない」とダメ出し

――インドというと、生活環境自体、なかなかハードなところですよね。
真鍋
オフィスは、バンガロールの外れにあり、道で牛も人も寝ていましたが、治安も比較的良く、環境にはすぐに馴染めましたよ。

大変だったのは、仕事ですね。課題をたずねると、「IT戦略を立案したい」とそれだけ。マイクロファイナンスのシステムはけっこうきちんとしたものが導入されていたのですが、そこからどうすればいいかが、誰もわかっていなかった。

普段、日本では、きちんと要件定義をしてからプロジェクトがはじまりますから、こんなゆるい依頼はありません

――まずは、課題をはっきりさせることから始めなければならなかった、と。
真鍋
そうなんです。そこで、インド訛りの英語を一生懸命聞き取りながらディスカッションし、課題の明確化と解決策の提案を実施したのですが、「全然違う」とダメ出しを食らいました。「お前に期待しているのはそんなことじゃない」と。滞在期間が3カ月しかないのに、1カ月経っても課題にすらたどりつけませんでした

会社に直談判までして、行かせてもらっているのに、成果なしでは帰れません。このままでは日本に帰れない……と冷や汗をかいていました。

――それはキツイですね。最終的には成果を出せたのですか?
真鍋
ギリギリでしたが、なんとかしました。粘り強くディスカッションを重ねた結果、1カ月半後に、ようやく課題にたどりつけたのです。かいつまんでいうと、システムを継続的に動かしていく上で必要なシステム提供会社の管理やプロジェクト管理のノウハウがなく、それを求めていたんですね。残り1カ月半で、必要なノウハウをまとめて、コンサルティングし、無事日本に帰れました(笑)

留職で苦しんだからこそ、成功体験から脱却できた

――この3カ月の経験によって、ご自身になにか変化はありましたか?
真鍋
大きく変わったのは、「いろいろな人を巻き込み、その人たちの知恵を借りて、仕事を進めるようになったこと」です。

実は、留職前は、一人で何でもやるタイプだったんですよ。プロジェクトリーダーをするときでも、「自分で責任を負うからには自分ですべてを決めたい」とトップダウンで指示していました。

しかし、留職中は、日本で私のことをサポートしてくれるチームがいて、マーケティングリサーチやソリューションの提案などで助けてもらった。課題がわからず落ち込んでいたときは、オンラインで飲み会まで開いてもらいました(笑)。

――メンタルの部分まで支えられていたんですね。
真鍋
チームのメンバーがいなければ、課題をクリアすることはできなかったでしょう。

この経験から、責任を持つことは大事だけれども、自分の能力に限界がある。他の人の力を借りれば、お客様にもっと良い提案ができる。そのことに気づかされました。

成功体験に縛られてはいけない、とはわかっていても、やはりこれまでそのやり方でうまくいっていると、なかなか変えられないものです。しかし、留職で悪戦苦闘することで、成功体験の呪縛から解き放たれ、自分をアップグレードできた。留職によって厳しい状況に立たされたからこそ、行き着けたことだと思います。

あなたは、「OS」をアップグレードしていますか?

――結びに、これから留職プログラムに挑戦しようと考えている人に、なにかメッセージをいただけますか?
真鍋
最近、「学び直し」の必要性が盛んに言われるようになりました。学び直しというと、スキルを身につけるというイメージがありますが、私は、これまでの人生でできあがった「OS」、つまり仕事観や人間観をアップグレードすることのほうが重要なのではないか、と思います。その上で、「留職」は非常に効果的。現地で強烈な原体験をするからこそ、OSをアップグレードできると思います。

これからの人生、まだまだ長い。私もまた10年後にもう一度行って、自分自身を成長させ続けたいですね。

――本日はありがとうございました!

―――――

真鍋さんが言うように、一度できあがった「OS」は、年を取れば取るほど、なかなかアップグレードできないものです。しかし、古いOSのままでは、動作が鈍くなり、いつかフリーズしてしまうことでしょう。読者の皆さんのOSは、最新版ですか?

【問い合わせ先】
NPO法人クロスフィールズ
URL:http://crossfields.jp/

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杉山 直隆「30歳からのインターンシップ」編集長

投稿者プロフィール

ライター/編集者。オフィス解体新書・代表。
1975年、東京都生まれ。専修大学法学部卒業後、経済系編集プロダクションで雑誌や書籍、Web、PR誌、社内報などの編集・ディレクション・執筆を、約20年ほど手がけた後、2016年5月に独立(屋号:オフィス解体新書)。http://officekaitai.xsrv.jp/ 2017年8月に本サイトを立ち上げる

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